読んだ

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)


便乗なのかなんだか知りませんが、だとしたら失礼な話ですが、これだけ有名な小説を、引用的な散文からの知識はずいぶん持っているつもりの小説を、今回復刊されていたので、いい機会なので読みました。


政治的なこととか言われたりするのかもしれませんが、赤とかレフトとかナチスとか全体主義とかは、私はよく分かりませんので、あれですが、人に関する優れた小説であると思いました。ネタばれあるかもしれませんので、よろしく。


ピンチョンが解説を書いています。

ウィンストンとジュリアの物語は、もし別の著者の手にかかれば、"愛は若き日の夢"のような駄作になったかもしれない。


まったく、甘いものは展開されず、極めてリアリティーのあるものとして提示されていくが、これをみて単に不快だとか思う人間は結局結局だろうと思うよ。


ピンチョンが解説を書いています

しかしここにハッピーエンドはないのだ。物語の終盤、真理省が互いを裏切ることを強要した後でウィンストンとジュリアが再開する場面は、気を滅入らせることにかけてはこれまで小説に描かれたどんな憂鬱な場面と比べても少しも遜色がない。


結局、ビッグブラザーを愛するに至る主人公で本編は終了しているが、ピンチョンが語るように、附録がこの小説には、この作者には、絶対に必要な部分だったのであろうと思う。例えば、私も「人間性」とかっていう言葉なんかなくてもいいとかいうつもりはありません。しかしながら、「彼の人間性に感動しました」とかいう言葉の意味と使用方法ってどうなってるのかなーってのはあるんでね。ずーっとある小学生の頃から。


考えることってあるのかな。自分で考えることってできるのかな。これを考えているのは私なのかな。あの人にとっての赤は私にとっての青かも知れないなんていうことはない。っていう事実を証明することなんてできなーい。